コテンマは森林公園をトコトコ歩いて行きました。
いつもの時間にいつものところに…
今日も…やっぱりお目当てを見つけたようです。
遊歩道の脇の広場のベンチに女の子が座っていました。
女の子はヴァイオリンをケースから出しているところでした。
「お姉ちゃん!」
「あ、コテンマくん、こんにちは!今日も聴きに来てくれたの?ありがとう。お姉ちゃんもちょっとコテンマくんが来るかなって思っていたんだよ?毎日コテンマくんに会うのがちょっと楽しみなんだ。」
そう言った女の子は年の頃は15、6でしょうか?
近くの高校の制服を着ています。
「今日から新しい曲の練習なの。だから、まだ上手く弾けないんだ、ごめんね」
そう言いながら、女の子はヴァイオリンを弾き始めました。
確かにあまり上手ではないようです。
けれど、コテンマはケースが置いてあるベンチにチョコンと座りニコニコしながら大人しく演奏を聴いていました。
その頃…林の木の陰に隠れて二人を見守るパパとママが居ました。
「結局、私たちも井戸に入っちゃったけど…同じ井戸からポンと放り出された時はビックリしたけど、コテンマが見つかったからよかったわ」
「ああ。けどさ…ここ、やっぱ、俺たちの世界じゃないぜ。景色が微妙に違う。お前も気づいただろう」
「うん…いったいここはどこなのかしら。それより…コテンマはいつもここに来ていたってこと?あの女の子が言うように。それに…あの子、どこかで見たような…」
「しっ!誰か来たぞ。」
天真パパとママはこっそり草陰に隠れました。
ベンチに向かって男子高校生が歩いてきていたのです。
それも数人。
2人は何かあったらすぐにでも飛び出せるように少しずつ見つからないように傍に移動することにしました。
「おい、お前、アカネって言うんだろ」
「………どちら様ですか?」
「誰だって関係ねーんだよ。なあ、この女で間違いないのか」
話しかけてきた男は隣の男に確認しました。
「間違いねえよ。いつも森村と一緒に居る。家が隣とか言ってたな」
「そっか。悪いな、恨むなら森村を恨めよ」
そう言ってその男はアカネと呼ばれた女の子の腕をつかみました。
「何すんの!!」
「森村を呼び出してあんだよ、お前は人質。あいつに一度でも痛い目見させてやらねえとな」
「イヤ!放して」
その様子を見ていたコテンマは男の足にしがみつきました。
「お姉ちゃんを放せ!」
「何?このガキ。お前の弟?ち、うぜーな。ガキはケガすっからどいてろよ」
もう1人が男の足からコテンマをはがすとコテンマは尻餅をついて転がってしまいました。
「ガキは大人しくしてろ。」
コテンマは悔しくてしかたがありませんでした。
どうしたって体格が違います。
幼稚園じゃ一番相撲も強いけど、この男には敵いっこない。
幼いながらにすばやく状況を判断できるのは天性の勘なのか。
それとも遺伝なのか。
『大切な女は守ってやらないとな』
頭の中で天真パパの言葉が浮かびました。
(なんとかしないと…)
『パパはこれでも術も使えたんだぞ。こう印を結んで…』
(パパが言ってた術…えっと、えーーっと)
「う、うなれ…うなれ………?」
【うなれ、天空!召雷撃!】
「え?」
コテンマはキョロキョロ見渡しました。
今、パパの声が聞こえたみたいだったけど…
でも!今は!
「うなれ天空!召雷撃!」
コテンマは何が起こったのか分かりませんでした。
気が付くと男たちが倒れていました。
「コテンマちゃん!!凄い!!どうやったの??さっき、突き飛ばされて転んだトコ大丈夫??あ!すりむいてる…」
アカネお姉ちゃんが駆け寄り呆然と立っているコテンマを抱っこしました。
すると、向こうから走ってくるもう1人の男が居ます。
「アカネ!大丈夫か!」
「小天真くん、私は平気。それよりこの子、ひざ、すりむいちゃって。手当てするから私の家までおぶってもらっていい?」
「ケガか?構わないが、さっきの…あの気配…あれは?」
「ん?この子もコテンマくんって言うんだけど、お姉ちゃんを守ってくれたんだよね〜」
そう言ってお姉ちゃんはニッコリ笑いました。
コテンマはニッコリ笑ってお姉ちゃんと手を繋ぎました。
そして、ブツブツ文句を言いながらも後から来たお兄ちゃんの背中におぶわれてお姉ちゃんの家に向かいました。

草陰では…その顔を見て隠れていたパパとママはビックリしました。
だってお兄ちゃんはパパにそっくりだったからです。
「これってもしかして…」
「ああ、もしかするな」
パパとママは顔を見合わせました。
つづく。
おまけ…
「それにしても天真くん、人に召雷撃打っちゃダメだよ」
「うっせー」