◇夜ご飯にて、彼に好き嫌いがあった事が発覚。
彼の嫌いな物とその時彼が取った行動を教えて下さい。
大学の帰りに立ち寄ったスーパーで目にした「うなぎ特売」ののぼり。
「土用丑の日、かぁ・・・」
今夜の夕食はこれで決まりでしょ!
即決で、うなぎの蒲焼を二匹購入して家に帰った。
アルバイトから帰ってきた天真くんを出迎えて、
今日はうなぎだよー!と声をかけた瞬間、天真くんの顔が微妙にひきつった。
「あ・・・うなぎ?」
「うん、今日、土用の丑の日だとかいって、安かったから・・・」
「へー・・・」
「・・・・・・もしかして、苦手、だった?」
「ん・・・まぁ、ちょっとだけ、な」
苦手とはいえ、食べられないわけではないらしい。
いただきマス、と殊勝に手を合わせてから天真くんは食べ始めた。
言葉少なくもくもくと。
そんな天真くんらしからぬ姿に、次の土用の丑の日にはあなごにしようと思った。
◇お風呂あがりの無防備なところに突然彼が帰ってきました。
巻きバスタオル1つのあなたの姿を見られてしまったあなたの対応と心の声をどうぞ。
『帰り、遅くなる。悪い』
必要最低限の、まるで電報のようなメール。
別に謝る必要なんてないのに、と思いつつも、携帯を閉じたあと、
自然とハァ、とため息がもれた。
今日はアルバイトはないはず。
大学に行って帰ってくるだけのはずが、急になにか用事が入ったのだろう。
・・・なにかあったのかな。
友達と遊びにいくなら、遊びにいくと、いつもならそう言ってくるのに。
ただ、遅くなる、とだけ。
しかも、悪い、と一言つき。
ざわ、と胸騒ぎがした。
ふと気配を感じてカーテンを開けて窓の外を見ると、
街灯の周りが白くぼやけてみえた。
雨――・・・
今日は雨が降るからと言って、
天真くんは傘をもって出ていたから、大丈夫・・・
だから安心、なんて、自分に言い聞かせてみても、胸のモヤは晴れない。
「はぁ・・・・・・・・・お風呂にでも入ろ」
こういう時は気分転換するしかない。
今夜は特別な入浴剤を使おう。
甘いハチミツの香りがするから、天真くんはいやがるかと思って、
普段は使わないのだけど。
・
・
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ほっこり温まれば気分もリラックス。
フンフン♪と鼻歌まで歌っちゃう。
濡れた髪を洗いたてのタオルで丁寧にドライ。
肌から立ち上るハチミツの香りに、自然と笑顔になる。
と、その時。
ガチャガチャと鍵が開けられる音がして、私はビクッと体をすくめた。
「やべえ、びしょびしょだ」
天真くんが帰ってきた!
い、いそいで服着ないと、着ないと・・・
「ダメェー!」
バスタオル一枚で、必死に身を隠して。
羞恥のあまり、体が震える。
胸が痛いほど心臓が脈打つ。
あまりの情けなさに、涙が出てくる。
自分が "女" であることを、天真くんの前では封じてきたのに。
そうすることで、天真くんのそばにいられるのだと、
精一杯虚勢を張っていたのに・・・
けれど。
いつのまにか、私は天真くんに抱きしめられていた。
天真くんは雨に濡れてきたのか、全身ズブ濡れで、ひどく冷たかった。
「天真くん・・・・冷たいよ・・・・早くお湯で温まって」
天真くんのただごとではない様子に、
自分のことなど、どこかに飛んでいってしまった。
◇ちょっとした事から喧嘩になってしまいました。原因は何?
お風呂からあがって、乾かしたばかりの髪がお互いぽわぽわしてる状態で、
こたつに入って話をきいた。
「いつもと違うから・・・・何かあった?」
そうたずねると、視線を手元に落としたまま、ぽつぽつと天真くんが話してくれた。
女の子に呼び出されて、告白されたことを。
ぎゅっ、と胸が締め付けられるような痛みがはしる。
あの胸騒ぎはこういうことだったのか・・・
メール一通で、こうも聡く天真くんの異変を感じ取ることができてしまうなんて。
「天真くん・・・・正直すぎだよ」
ぽろ、と涙があふれた。
否定、して欲しかったのに。
現実を認めたくなかった。
天真くんのことを見つめているのは自分だけじゃないと、
頭ではわかってはいても。
断ったときいても。
それでも。
なのにバカ正直に他の女の子から告白されたことを報告しちゃうんだ?
私・・・どれだけ天真くんに信用されてるんだろうね。
嬉しいけど、なんだか切ないよ・・・
一度堰をきってしまった涙は止まらず、ぼろぼろ大粒の涙が零れた。
こんなに泣いて、みっともない・・・天真くんだって、困ってしまってる。
天真くんが告白されたのに、なんで私が泣くの?って。
わけわからないよね。
ごめん・・・ごめんね・・・
◇仲直りに成功! あなたも彼も寝るまでにはまだ時間があります。何をして過ごす?
早く泣きやまなければと、思えば思うほど、
涙はあとからあとからあふれてきた。
頬にこぼれた涙をぬぐおうとすると、
その手を天真くんにつかまれた。
なに・・・?
驚いて思わず天真くんをみると、
天真くんまでなんだか泣きそうな顔をしていた。
そのまま手をぐっ、と引き寄せられて、顔が近い・・・と思った次の瞬間、
唇が重ねられていた。
・・・もう、言葉はいらなかった。
天真くんに求められるがままに、
自分の心が求めるがままに。
想いと体を重ねた。
◇疲れていたのか、彼が布団に入らず眠ってしまいました。あなたはどうする?
・・・どれくらい時間が経ったのだろう。
寝なれぬ床に、ふと意識が呼び起こされ目を覚ました。
隣に濃厚な人の気配。
背中にはしっかりとその人の腕が巻かれ、
私はすっぽりと天真くんの腕の中にいることに気づいた。
かぁっ・・・と体が熱くなる。
天真くんは満足しきった様子で、すぅすぅと寝息をたてていた。
起こすのにしのびなくて・・・それに、あまりに居心地がよくて。
私ももう一度目を閉じてしまう。
すり、と、そうっと身を寄せて、天真くんの胸に鼻をうずめて深呼吸をする。
胸いっぱいに天真くんの匂いを吸い込んで、
はぁ、と吐き出した息は、自分でも驚くほど甘かった。
◇あなたも寝ようと思った時、彼の口から微かに寝言らしき声が。何て言った?
「・・・・・・未来・・・」
起こしてしまったのかと、思わず息をとめて様子をうかがう。
けれど、すぐにまた穏やかな寝息がきこえてきて、
それが寝言であったことを知った。
眠っていても、その夢の中でまで私の名前を呼んでいる。
彼の想いが、彼の体すべてから伝わってくる。
愛しい・・・
彼のことが愛しい。
体を小さくして、さらに天真くんのそばに寄る。
これ以上くっつけないというほど、近くに身を寄せて。
そして、目を閉じた。
暖かな天真くんの腕の中で、
心地よい眠気に意識をゆだねながら、
もう、がんばらなくていいんだと、
そう、思った。
おしまい