パパとママの恋物語【パパ編】1




偶然?
そうだな、最初は偶然かもしれない。
けど…一緒にいたいって思ったのはお前だから…


だから、とっさにあんな事を言ってしまったんだよな。





未来とは大学に入ってから知り合った。
交流とは名ばかりの飲み会サークルに入ってみたら
ひときわ明るくいつも笑ってる子がいた。


可愛いけど、特別ってほど美人でもない彼女なのに、
俺はいつしか目で追うようになっていたんだ。

けど、彼女は昔からモテたんだろうな。
色んな男からも誘われていたのを知っている。
上手くかわすその様子を見ながら
『俺もああして振られるのかな』
なんて、俺らしくもなく臆病になってた。


合コンとは違うって規則のそのサークルは、今時「サークル内の男女交際禁止」
そりゃ、カップルが居たら気を遣うから楽しくは飲めない。
あくまでも友達でワイワイ酒飲むサークルだった。

だから、自分の気持ちに気が付いていても未来には言えなかった。
彼女はそのサークルが大好きだったから。






3年になった頃だった。
そろそろ就活のことを考え始めていた。
家から都内は遠い。
今でも朝の通学はキツイ。

「独り暮らしを始めるか…」

親には通学の時間をバイトに当てるからと無理やり承諾させた。
けれど、

「都内のワンルーム…高けぇ」

親から言われてた家賃は7万まで。
初めてマジマジと街の不動産屋の前にたって物件情報を見る。
この時期、学生寮に空きはない。

「ワンルームでもこんなにすんのか・・・」
「高いよねー」

突然、声がして後ろを振り向くと立っていたのは未来だった。
どうやら、未来も同じことを考えていたらしい。

「ね?天真くん、これ、見て」

未来が指差したのは一軒屋の情報だった。
築30年の3DK。

「ええ!12万!安い!」
「でしょう?ユニットバスじゃないし。でも一人じゃ払えない家賃だよね」
「そうだな。ルームメイトでも居ればなあ…広いしさ」
「天真くん!いい事言った!」
「ん?」

情報の張り紙から目を移すと、ニンマリと笑ってる未来が居た。



◇同居が決まった時、あなたがまず口にした台詞は?


「ま、まじで?」

「本気よ」
未来は前から大胆で潔いところがある。
俺の返事も聞かず、不動産屋のドアを開けた。
それから先は不動産屋と未来の話を脇で聞いているだけだった。

不動産屋の営業マンは時折、チラチラと訳知り顔で俺の顔を見ていた。
(絶対、誤解してる)
けれど、わざわざ説明するまでもない。
俺は黙ってそっぽを向いていた。

考えてみれば、未来と一緒なのは幸運だった。
面倒な手続きもすべて片付けてくれた。
紹介された家は平屋でこじんまりとしていたが、2人で暮らすには十分だった。
小さな門扉を開けると猫の額ほどの庭とはいえないスペースがあった。

「ここに、バイクが置けるね」

未来が何気なく言う。
俺の趣味、覚えていたのか。
2人の共有スペースなのに、さりげなく俺に譲ってくれる優しさが未来にはあった。

6畳の部屋が2つと真ん中に8畳のリビング。
「ここ、こたつ、置いていい?私が持ってくるから」
無邪気にレイアウトを夢見る姿が可愛かった。

「天真くん、見て」

指差したほうを見れば奥に小さな裏庭が見えた。
「庭付きなんて贅沢だね」
嬉しそうに笑う未来を見て、俺はすっかり現実のことを忘れていたんだ。


◇では、その時の心の声は?

(いや、待てよ?いいのか?俺は男、未来は女…)

未来は簡単に男と同居するんだろうか。
一人暮らしは初めてだって言っていたけど。
けど、大胆すぎやしないか?


「おい、本気なのか?俺、男だぜ。親が何て言うか。」
「親?平気。私は信用あるし、もう成人しているんだよ?それに…」
「それに?」
「天真くんなら安全だもん」


安全パイってことか?
軽くショックは受けたけど、好きだった未来と暮らせる。
夢なら醒めてからガッカリすればいいよな。

根っからの楽天家の俺たちの同居生活はこうしてスタートを切ったんだ。



続く。

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